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廊下の足音が部屋の前で止まり、襖が開いて、女中が顔を出した。
「あの……失礼します」
敷居に膝をつき、どぎまぎとした様子で座敷を見回したのは、頬の真っ赤な、見るからに山出しの小娘だ。さっきも運んできたお膳をひっくり返すなど、安くはない金を取る伊豆の観光旅館にしてはいささかお粗末な接客ぶりだ。
小説を読もう「ダブル・ジョーカー柳広司」言葉表現
- 2019/08/01
- 18:14
小説が好きで、好きな表現をの仕方まとめただけの資料です。
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書き出し
廊下の足音が部屋の前で止まり、襖が開いて、女中が顔を出した。
「あの……失礼します」
敷居に膝をつき、どぎまぎとした様子で座敷を見回したのは、頬の真っ赤な、見るからに山出しの小娘だ。さっきも運んできたお膳をひっくり返すなど、安くはない金を取る伊豆の観光旅館にしてはいささかお粗末な接客ぶりだ。
森島が何度も頭を下げながら座敷を出ていくと、彼を送っていくはずの男がさっと踵を返して、風戸に近寄った。
「……どうしますか?」
「殺せ」
風戸は短く言って、掌に密かに装着していたスポイト状の容器をむしり取った。
「……どうしますか?」
「殺せ」
風戸は短く言って、掌に密かに装着していたスポイト状の容器をむしり取った。
風戸は新しくもってこさせた盃に、なみなみと酒を注いだ。
酒の表面が重く揺らぎ、さざ波のように室内の明かりを映している……。
酒の表面が重く揺らぎ、さざ波のように室内の明かりを映している……。
きつく噛み締めた奥歯が、みしりと音を立てた。怒りのために視界が赤く滲む。
ーなめるな。
風戸は細く目を引き絞り、真っ赤に染まった視界の中で、会ったこともない結城という男を強く睨みつけた。
ーなめるな。
風戸は細く目を引き絞り、真っ赤に染まった視界の中で、会ったこともない結城という男を強く睨みつけた。
風戸は思わずニヤリと唇を歪めた。
ー似てやがる。
笑ったのは、そう思ったからだ。
ー似てやがる。
笑ったのは、そう思ったからだ。
阿久津中将はしばらく無言のまま、指先で机の上をこつこつと叩いていたが、
「名前を明かすことはできない。そのつもりで聞け」
と前置きしてから、ようやく口を開いた。
「名前を明かすことはできない。そのつもりで聞け」
と前置きしてから、ようやく口を開いた。
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- テーマ:文学・小説
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- カテゴリ:小説から表現、描写を学ぶ
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