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東野圭吾さんの夜明けの街での書き出し
- 2020/07/11
- 08:00
不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。妻と子供を愛しているなら、それで十分じゃないか。ちょっとした出来心でつまみ食いをして、それが元で、せっかく築き上げた家庭を壊してしまうなんて愚の骨頂だ。
もちろん世の中に素敵な女性はたくさんいる。僕だって、目移りしないわけじゃない。男なんだから。それは当然のことだ。でも目移りするのと、心まで奪われるのとはまるで違う。
不倫が原因で離婚して、慰謝料代わりにマンションを奥さんに取られ、おまけに子供の養育費まで払わされているという人が、ついこの間まで社内にいた。その人は慣れない独り暮らしのせいで体調を崩し、ついでにノイローゼ気味になって、ついには仕事でとんでもない大失敗をやらかした。その責任を取る形で会社を辞めたわけだけど、離婚の原因となった相手の女性とも、結局は結ばれなかったらしい。つまり彼はすべてを失っただけで、何ひとつ手に入れられなかった。彼は夜毎、安いアパートの天井を見つめて、一体どんなことを考えているんだろう。
もう一度いう。不倫する奴なんて馬鹿だ。
ところが僕は、その台詞を自分に対して発しなければならなくなった。ただし、その言葉の後に、こう続ける。
でも、どうしようもない時もある ー 。東野圭吾さんの夜明けの街でより
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