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エミリ小さな包丁
名言集 森沢明夫さんの「エミリの小さな包丁」に出てきた名言
- 2019/10/19
- 08:53

「神様って本当にいると思う?」
神社でそれを訊くのはどうかとも思ったけれど、あまり信心深くはないわたしは、さらりと訊いてみた。すると、おじいちゃんは、拝殿の奥の方を見つめたまま、ぼそっと答えた。
「神様ってのは、自分自身のことだ」
好きにしろと言われると、むしろわたしは困ってしまう。自分から何かをやると決めない限り、なにもやらないことになるから。つまり、すこく暇になるのだ。考えてみれば、都会にいたときのわたしは、ただ上司にやれと命令されたことに「従っていた」もしくは「やらされていた」だけの日々だった気がする。
「おじいちゃんは? なにか、願いごとあるの?」
すると、おじいちゃんは、思いがけない台詞を口にしたのだ。
「とくに、ないな。ただーー」
「ただ?」
「幸せになることより、満足することの方が大事だよ」
常識って、なんだろう?
そもそも、常識なんてものは、誰かが勝手に作り出した「幻の縄」のようなものなのかも知れない。わたしたち凡人には、目に見えないその縄に、自由な思考と心をがんじがらめに縛られていることに気づかぬまま、漠然と息苦しい日々を過ごしているのではないだろうか。
「でも、雨、大丈夫ですかね」
「うふふ。いまは降ってないよ」
「…………」
でも、もうすぐ降りそうだし、とわたしは思う。
「少しくらい怖くても、とにかく行動しちゃえば?」
「ブランコに揺られながら泣いてたこともあってさ。でも、あるとき、ふと思ったわけ。過去の失敗に学ばない人間は阿呆だけど、過去の失敗に呪縛されたまま生きている人間はもっと阿呆だよなって。だってさ、もったいないじゃん」
「エミリちゃんさ、鼻歌を歌っちゃいなよ」
「え?」
「つらいときでも鼻歌を歌っていればさ、世界は変えられなくても、気分を変えることなら出来るからさ」
「ようするに、エミリを思いのままに動かせる万能な存在は、唯一、エミリ自身だろう。エミリの人生を自由自在に創造していけるのも、エミリ本人しかいないんだ」
「うん。そうだね」
そういう意味で、自分は、自分自身の神様ーーということか。
わたしの手に馴染んだ、小さな包丁。
おじいちゃんに教わった、いくつもの珠玉のレシピ。
それらは、都会で暮らすわたしにとっての小さな武器だった。
誰かを喜ばせることのできる、やさしい武器だ。
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- テーマ:文学・小説
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