非常灯の緑色の光だけが、磨き上げられた廊下を冷たく照らし出していた
- 2020/12/29
- 22:51

自動ドアをむりやりこじ開けて、二人は生暖かい病棟に入った。灯はすっかり消えており、非常灯の緑色の光だけが、磨き上げられた廊下を冷たく照らし出していた。 こだまする靴音に気がねしながら長い廊下を折れ曲がると、待合室に出た。浅田次郎さんの日輪の遺産より...
体がしぼむような深い溜息をついた
- 2020/12/27
- 21:22
隙間から差し入る光が、えんじ色の絨毯の上を、刃のように伸びていた
- 2020/12/27
- 12:45
なるべく平易な口調で真柴は訊ねた
- 2020/12/27
- 12:28
たぎるような炎天を見上げながら顎を拭った
- 2020/12/27
- 12:04
コンクリートの回廊に硬い靴音を響かせ
- 2020/12/27
- 11:59
妻の声は昏れ残る雑木林の稜線を越えて、やっと届くほどに心細かった
- 2020/12/27
- 09:53

携帯電話が胸の中で鳴った。 こちらの声を待つ長い、暗い間は、妻からの連絡である。「もしもし、どうした」 さらに一呼吸おいてから、妻の剣呑な声がした。 タバコを喫うために病棟から出ると、冷たい夜であった。妻の声は昏れ残る雑木林の稜線を越えて、やっと届くほどに心細かった。浅田次郎さんの日輪の遺産より...
ひとしきり胸を膨らませると、そのまま動かなくなった
- 2020/12/27
- 09:50

とりちらかった床板の酒や肴にまみれて、老人はぼんやりとサッシ窓の小さな冬空を仰ぎ見、白い太陽のありかに目を細めながら、ひとしきり胸を膨らませると、そのまま動かなくなった。浅田次郎さんの日輪の遺産より...
ただれ落ちるような涙をたたえている
- 2020/12/27
- 09:40
すりガラスごしに見るような白い太陽が傾きかけていた
- 2020/12/26
- 22:00

低くたれこめた冬空にもかかわらず、妙に生暖かい日であった。バックストレッチの彼方に多摩丘陵の山なみが霞んでおり、すりガラスごしに見るような白い太陽が傾きかけていた。それさえも不吉な落日に思えた。浅田次郎さんの日輪の遺産より...
小説に出てきた名言 坂木司さんの僕と先生より
- 2020/12/26
- 09:00

坂木司さんの僕と先生より「話せばわかる。それだけのこと。なのにわからないとか面倒とか口べただとか言って、話さない。そしたら相手は仮想敵国みたいに、どんどん大きくなってもっと話しにくくなる」「だからさ、言い方の問題なんだよ」 書店を出たところで、隼人くんはため息まじりに言った。「理由より前に『お願い』を出されたら、身構えるでしょ。相手に断る気を起こさせる言葉を、最初に言っちゃダメなんだ」...
坂木司さんの僕と先生の表現、描写
- 2020/12/26
- 09:00

坂木司さんの僕と先生より「これ、ステーキ肉なんだって。今日の最高級食材らしいよ」 ほどよく焼けた厚みのある肉。僕はちょっと感動しながら、それにかぶりつく。ほどよい脂っこさと、焼いたトマトの酸味。そこにきつめの塩が効いていて、すごくおいしい。 白い壁に大きめの窓。ぱっと見は、いかにも時代遅れの喫茶店といった風情だ。枯れたツタがところどころへばりついているのも、何だか寂しい。 最初の刺激の後に、チョコ...
買いそびれた人々の声が、大きなひとつの溜息になった
- 2020/12/26
- 08:00

「たのむ、入れてくれ!」 そう叫んだとき、無情のベルが鳴った。発売機は作動不能の呼音を残して停止した。「あ、お客さん、申しわけありません。締め切りました」 買いそびれた人々の声が、大きなひとつの溜息になった。浅田次郎さんの日輪の遺産より...